理事長 小林哲朗
岸田首相が令和5年の年頭記者会見で今年の大きな挑戦の一つとして少子化対策を挙げたことが注目を集めました。「異次元の少子化対策」だそうです。昨年末既に出産育児一時金の支給額を現行の42万円から50万円に増額することが決まっていましたが、最重要政策と位置付けて諸政策を協力に推進していくとしています。
その対策の中身はというと、第1に、児童手当等の経済的支援の強化。第2に、幼児教育や保育サービス、産後ケア、一時預かりなどの子育て家庭を対象としたサービスの拡充。そして第3に、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実となっています。中身だけみると、これまで大差ないので、異次元とは質ではなく、量(金額)が今までよりずっと大きいということなのでしょう。
しかし、今まで行ってきた施策では十分な成果が上がっていないのは確かですから、既存の対策を拡充・強化するだけでなく、違った視点からの対策を行っていくことも必要でしょう。婚姻件数は2000年以降ずっと減少傾向にあり、10年には70万件余りだったのが、19年は59万9千、コロナ騒動が始まった20年は52万5千、そして21年は50万千にまで減少しています。結婚してから妊娠・出産というのが一般的である日本では、婚姻数の減少は出産数の減少に直結します。
少子化対策というとこれまでは既婚者への支援、働きかけが主でしたが、若い人が結婚できる環境を作っていくことも同じくらいに重要な政策といえます。結婚しないで一生ひとりと考えている人が増えているという調査もありますが、そうした人の中には経済の低迷が長く続いて給料が上がらず、結婚したくても諦めている人も少なくないはずです。いずれにしても、最初に所得倍増と言っていたのがいつの間にか資産倍増になっっいたり、急に増税の話が出てきたりと、信念に基づいて発言しているのか疑わしいような人なので、言葉に踊らされないよう注視していく必要があるでしょう。