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食料自給率について考える

食養指導士 小林哲朗

食料自給率とは、国内で消費されている食料のうち、国内生産でどのくらいまかなえているかの割合を示したものですが、その割合は米や麦、野菜、果物、魚介類などの品目によって大きく異なります。また計算方法も重量を基準にしたもの、カロリーを基準としたもの、生産額を基準としたものなどいくつか種類があります。食料自給率には、品目ごとの自給率である品目別自給率と、食料全体について共通の「ものさし」で単位を揃えることにより計算する総合食料自給率の2種類があります。

品目別食料自給率

一番分かりやすいのが重量を基準とした品目別食料自給率です。1年間の国内の生産量を消費量で割ったものです。農林水産省「食料需給表」(令和元年度)から品目別食料自給率を算出すると、米97%、野菜79%、魚介類は52%となっています。これらは比較的高い方ですが、和食に欠かせない大豆は6%、果物38%、油脂類13%などとなっています。畜産物は飼料自給率を考慮するかどうかで数字が大きく違ってきます。例えば飼料を考慮しない場合は鶏卵の自給率は96%ですが、国産の飼料で育てられた鶏の卵となると自給率は12%になってしまいます。

品目別食料自給率

品目別自給率=国内生産量÷国内消費仕向量

国内消費仕向量=国内生産量+輸入量-輸出量±在庫の増減量

食料自給率の計算では、畜産物は国産飼料で育てられた物のみを国内生産量の中に含めている。(一方、食料国産率では飼料が国産か輸入かを考慮しない)

農林水産省の食料需給表から、国民1人1年あたりの品目ごとの消費量を昭和40年度と令和元年度で比較すると下の表のようになります。米の消費量は半分以下になっています。一方で、肉類、卵、牛乳・乳製品、油脂類の消費は大きく増加しました。畜産物の自給率は、飼料自給率を考慮するとかなり低くなります。また野菜、魚介類の消費量は減少、果物は増加というのは個人的な印象どおりです。果物の場合は、昭和40年頃には果物と言えば、温州みかんとりんごのシェアが圧倒的で自給率も90%程度ありましたが、徐々に輸入果物の消費が増え、温州みかんとりんごの消費が減少していきました。令和元年度の温州みかんの消費量は昭和40年度の約45%減になっています。

※品目別自給率は、各品目における自給率を重量ベースで算出しています。品目別自給率では、食用以外の飼料や種子等に仕向けられた重量を含んでいます。

総合食料自給率

総合食料自給率とは、食料全体について単位を揃えて計算した自給率のことで、供給熱量(カロリー)ベースと生産額ベースの2種類があります。なお、畜産物については、輸入した飼料を使って国内で生産した分は、総合食料自給率における国産には算入していません。

カロリーベース総合食料自給率

カロリーベース総合食料自給率は、供給されている食料を熱量(カロリー)に換算して、その全体に対する国内生産の割合を示したものです。令和3年度のカロリーベース総合食料自給率は38 %でした。

生産額ベース総合食料自給率

生産額ベース総合食料自給率は、食料全体を生産額に換算し、その全体に対する国内生産の割合を示したものです。令和3年度の生産額ベース総合食料自給率は63%でした。

総合食料自給率

カロリーベース総合食料自給率(令和3年度)

=1人1日当たり国産供給熱量(860kcal)÷1人1日当たり供給熱量(2,265kcal)=38%

生産額ベース総合食料自給率(令和3年度)

=食料の国内生産額(9.9兆円)÷食料の国内消費仕向額(15.7兆円)=63%

総合食料自給率の問題

カロリーベースの場合、熱量(カロリー)に換算するので、例えば穀類や芋類などカロリーが高い品目の値は大きくなりますが、キノコや海藻類などは自給率にほとんど寄与しないことになり、これだけでは全体像をつかむことは難しいと言えます。また生産額ベースの場合は、輸入品に比べて国産品の値段の方が高い傾向にあるのでカロリーベースより自給率は高くなる傾向にありますが、この数字もまた実際の国内生産の状況を反映しているとは言えません。結局、主要な品目の品目別食料自給率を見ていくしかないのでしょう。

ぱっと目に付くのは大豆と小麦の自給率の低さです。特に大豆は和食には本当に欠かせない食材ですので、その自給率を上げていくことは絶対に必要です。今回自給率を調べてみて意外だったのは、小麦の消費量が過去50年くらいの間でそれほど増えていなかったことです。ご飯の消費が減って、パンやパスタ、ラーメンなどの消費が増えたのかと思っていましたが、このデータからは、いわゆる主食である穀類全体の消費が減ったのだということが見て取れます。

日本は先進国の中でも食料自給率が非常に低い国です。他の国々は過去の教訓から戦略的に食料自給率を高めてきましたが、日本の政策にはそうした視点がほとんど感じられません。これからの日本は経済安全保障の観点からも、大胆な規制改革をし、本腰を入れて主要品目の食料自給率を高める施策を取っていかなければいけないでしょう。