NPO法人お産子育て向上委員会 理事 小林哲朗
出産費用を全国一律にする?
今までは自費診療だった正常分娩の出産費用を保険適用にするとか、実質的な負担をゼロにするとかという話が進められているようです。
保険適用するということは料金を全国一律にするのかなと思いますが、出産費用は東京などの大都市と地方ではかなりの差があり、平均で20万円以上の開きがあるとも聞きます。大都市の料金に合わせてくれたら地方の産婦人科は喜ぶかもしれませんが、なかなかそうはならないでしょう。
しかも、平均以下の料金の産婦人科であればともかく、施設にお金を掛けたり、医療スタッフを充実させたりして付加価値を上げて、平均以上の高い料金でやっている産院からすれば、料金が低くなって定額になるというようなことになれば死活問題となります。
料金を定額にするとどうなるのか?
そうするとどうなるのか?
例えば基本のサービスをトコトン削り、大半をオプションにして追加料金を取ったり、何かと言い訳をつけて検査や処置を増やしたりする。
あるいは会陰切開や点滴のように、医療処置ではあるものの、今までは料金全体に込みで入れてあり、あえて請求していなかったものも全部請求するようにする。
吸引、帝王切開なども増えるかもしれません。
また豪華な料理、こだわりの料理を売りにしている所も基本サービスとして提供することはなかなか出来なくなるかもしれません。もらうお金は一緒なのに、費用ばかりが掛かるからです。
そもそも、今は産院によって宿泊日数もまちまちですから、これもどう設定するのかが問題となります。海外の国のように、基本は1泊2日とか2泊3日とかにして、後はオプションとしたり、産後ケアサービスとして別のサービスにしたりするとかというのもあるかもしれません。
お産の質そのものが変わる
定額ということになると、全体で稼げる額がほぼ決まってくるわけですから、地域や施設の規模にもよりますが、もし割に合わないとなれば、閉院したり、コストが高い産科医から、助産師をより活用した出産に重点を移したりする所も出てくる可能性もあるのではないかと考えられます。
いずれにしても、本人の負担がどうかというのとは別に、産科施設が受け取る出産1件あたりの料金が定額になればお産の質そのものが変わるのは間違いないでしょう。
2024年4月から出産育児一時金が引き上げられたことで、大都市近郊以外の地域では実質的な負担はないかわずかになっていますので、市民としては、負担がどうなるかという問題と併せて、この質の問題についても関心を持って見ていく必要があるでしょう。