産後支援ステーションははこ庵オープン

千葉市が家賃補助の対象を日帰り入院の事業者に限定することは不合理

理事長 小林哲朗

千葉市が産後ケア事業において、日帰り入院を行っている特定の事業者にのみ家賃補助を行っているという今回の件(詳しくはこちら)に関しては、特定の事業者のみに補助金を給付するという公平性の問題や、申請の手続きや内容が不透明であるという公正性の問題があるだけではない。家賃補助の対象を訪問と日帰り入院のみを行う事業者に限定し、宿泊入院を行う事業者は対象外としていること自体がそもそも著しく不合理である。

産後ケア事業担当者の上司は、日帰り入院のみを行っている所はキャンセルがあった時に食材が無駄になって大変だが、他の事業を行っている所はそういう場合でも別のところで使えるし、他でも稼げるから補助の対象にはしないと説明した。しかしこれが本当に上限20万円の家賃補助をもらえるかもらえないかの理由、判断基準になるのだろうか。そもそも実際にこれまでどれくらいキャンセルがあり、どれほどの損害があったというのか。各事業所がキャンセル料を設定すること自体禁止されていないし、うちも当日キャンセルなどについては請求することにしている。旅館やホテルの宿泊にだってあるのが普通だからだ。

日帰り入院を行えるということは、施設的には当然宿泊入院も可能なわけである。しかし宿泊入院の場合は夜勤をすることになるので、個人でやるにしても、人を雇ってやるにしてもかなり大変なことになる。宿泊はやらずに手軽にできる日帰り入院のみを行いたいという気持ちは理解できる。しかし育児経験者であれば誰でも分かると思うが、この時期の育児は夜が大変なのだ。特に初産の方、また初めて母乳で育てたいと思っているお母さんにとっては分からないことだらけで大変だ。母乳育児は慣れて軌道に乗ればむしろ人工乳より楽になることもあるが、コツをつかむまでに少し時間がかかる場合が多い。産後すぐは母乳の分泌が十分でないことも多いし、出産時の疲労が残っていて体力的にも辛い。身近に経験者が居てサポートしてくれればいいが、それも無いとするとより大変になる。

こんな時にこそ助産院での産後ケアの宿泊入院が役に立つ。経験豊富な助産師が1対1で指導してくれ、疑問に1つ1つ答えてくれる。1泊2日か2泊3日もすれば大抵コツやリズムがつかめるはずだ。しかし、日帰り入院は昼間の6~7時間だから日勤者1人でいいが、宿泊だと1泊2日でも日勤と夜勤、次の日の日勤も必要になる。東京や神奈川では常時複数人が宿泊する助産院もあり、そういう施設ではある程度収益も上がるかもしれないが、千葉ではそういう所はほとんどないと思う。宿泊入院をやっている助産院は、お金が儲かるからやっているのではなく、大変だけど必要だと考えているからこそ、歯を食いしばってやっているのだと思う。宿泊入院をやるのは大変なので、日帰り入院のみの所をどうこういう気はないが、昼しかやっていないので、半分から3分の2は産後ケア事業としては使っていないことになる。施設の活用という面でみると十分とは言えない。だから、むしろ日帰り入院のみの所には、宿泊入院をやるなら補助金を出すという方がはるかに筋は通っていると思う。それを逆に宿泊入院をする所は補助の対象外とするなんて到底考えられない。これでは、宿泊入院はやらなくていいと言っているのと同じではないか。税金の使い方として本当におかしいと思う。