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母乳育児とくる病について

助産師  小林昌代

「くる病:乳幼児に増える母乳、日光浴不足、食事が要因」このようなタイトルの記事が毎日新聞(平成26年5月2日付)に掲載されました。私は、何年か前に母乳育児を推進している団体がくる病について報告していたことがあり、そんなことがあるのだなと聞き流していましたが、最近になってくる病の子たちが増加し始め、こんな記事が掲載されたようでした。

またテレビでも、NHKおはよう日本のニュースで特集が組まれていてその中で千葉県こども病院の皆川真規医師は、「(以前、くる病は)学会報告などでも、非常に珍しい病態と考えられていた。ところが20年ほど前から、ぽつぽつ見られるようになり、最近は、ごくありふれた病気といっても過言ではないほど、患者さんは増えてきていると思う。」と述べています。
また同じニュース内で東京大学大学院小児医学講座の北中幸子准教授は、「母乳栄養は赤ちゃんにとって、とてもいいことだが、ビタミンDだけは、ミルクに比べ、非常に少ないと分かっている。ビタミンD欠乏性くる病になっている子どもは、ほとんどが完全母乳栄養の方に起こっている。」と述べています。

そして最後に司会者からは、「まず前提として、母乳には、たくさんいいところがありますし、紫外線も浴び過ぎはよくありません。それを踏まえた上で、母乳育児の赤ちゃんは、適度に外に出て日の光を浴びてください。離乳食の時期になったら、ビタミンDが豊富な魚や、卵などをとるように心がけてください。アレルギーがある場合は、医師や管理栄養士とよく相談してください。」とコメントがありました。テレビで放映されていた、くる病になってしまったお子さんは3年くらいかけてビタミンD投与などの治療を行った結果完治したということでした。早くに発見できれば完治できる病気だということです。

そもそもくる病とは、どのような病気かというと、ビタミンDの不足により、カルシウムなどの沈着が悪くなって、骨が柔らかくなります。成長期の子どもに、このビタミンが不足すると、足がエックス脚や、ひどいO脚になり、低身長などをおこしてしまう病気です。

最近の子どものビタミンD不足に関して、前述の北中准教授は、関東地方の健康な子ども69人の血中ビタミンD濃度を調べた結果、およそ4割の子どもで不足していたと報告しており、健康な子であっても不足しているということがわかりました。ビタミンDは、日光に当たると体内で生成されます。また日光に当たった食物や、卵、干した魚にも含まれています。アレルギーで食事制限をしていたり、外遊びをしなくなったりしたことも原因の一つとなるのだと思いますが、個人的には食物から普通に摂取できなくなったことも大きいのではないかと思います。

日光をきちんと浴びた食物にはビタミンDが含まれていますが、最近は天日干しされた食物が少なくなってきていて、時間短縮のために、乾燥機で乾物を作るということも珍しくなくなりました。ビタミンDを多く含む魚の多くが、干魚です。食生活の変化で乾物や干魚が食卓に上がらなくなったことが、思わぬところに影響を与えてしまっていることだと考えます。また、本来の過程を経てつくられたものを摂取して初めて栄養も十分に取れるはずなのに、作る過程に問題があると乾物や和食中心の健康的な食事を目指していてもあまり意味をなさないことにもちょっと驚きを覚えました。母乳育児されている子どもにビタミンDが足りないのは明らかにお母さんの食生活です。

健康な体つくりのために食事の説明をすることがありますが、食材の選び方も話していかなくてはいけないことがわかりました。くる病の子どもの大半が母乳育児されている子どもとなると、妊娠中からの食事が大変重要になります。助産院でも詳しく説明していきたいと考えています。