産後支援ステーションははこ庵オープン

体に合ったラクチン抱っこ紐講座催報告

理学療法士 井土麻子

 赤ちゃんとの暮らしに、抱っこは欠かせません。抱っこによる赤ちゃんと保育者双方の身体的、心理的なメリットがある一方、保育者、特にお母さんにとって、日常的な抱っこが肉体的負担となる報告があるのも事実です。しかしながら、赤ちゃんとお母さんに合った抱っこの方法を習得する、腰座り後の赤ちゃんはおんぶを積極的に選択するなどの方法で、保育者の負担が軽減され、赤ちゃんと過ごす時間をより楽しむことができるのではないかと考えています。また、多様で高価な抱っこ紐の中からひとつを購入したものの、疑問や不安を感じながら使用しているお母さんにもよく出会いますが、適切に調整した瞬間のお母さん達は必ず目の輝きを取り戻します。コロナ禍では、お母さんたちは他者が抱っこする姿を見る機会がなくなり、抱っこの仕方がよくわからないとおっしゃる方も増えているような気がします。

 6月10日の講座には、保育士、助産師、プレママ、プレパパ、生後3週間(!)から3歳までのお子さんとそのお母さん、全部で9組の方にご参加いただきました。なぜ抱っこするのか、抱っこすると赤ちゃんと保育者にどのような変化があるのか、縦抱っこと横抱っこは何がどう違うのか、赤ちゃんはどのように運動発達を遂げ、何に手助けが必要かについて説明したのち、抱っこ紐使用時の一般的な注意点やポイントを確認しました。それからみんなで素手抱っこの練習を行なって、参加者各自、スリング&ベビーラップお試しグループ、持参の抱っこ紐(ポグネー、ベビービョルン)チームに分かれ、どのように道具を使うと適切で、素手抱っこと同じ位置で赤ちゃんを抱っこできるかについて練習していきました。また、抱っこに課題を感じていないお母さん方は、さらしおんぶやラップでのおんぶを行いました。プレママ・パパには、チームに加わっていただいたほか、人形や3kgの米袋を使って幾つかの抱っこ紐やおんぶ紐の使用体験をしていただきました。

 素手抱っこでは、子供の高さ、腕の位置、手の向きなどを修正することで姿勢が変化することを体感していただき、実際には「自分が安定する」「子供の軽さが違う」「手首の負担が減る」などの感想がありました。抱っこ紐やラップは、赤ちゃんの位置を修正するために布やストラップを引き締める際には、抱っこ紐やラップごと赤ちゃんを抱えながら、素手抱っこと同じ位置にした状態で引き締めること、赤ちゃんの首や腰が潰れないように、頭部や背骨、骨盤の位置を修正することなどにて、「密着できている」「落ち着いて家事ができそう」「いつもは反り返るのに今日はうっとり落ち着いている」などの変化を見せていただきました。さらしおんぶのポイントとして、赤ちゃんを揺すり上げるタイミングやその際の紐の引き締め方向などをお伝えしたことで、「赤ちゃんとの一体感が出る」「ずり落ちる感じがなく安定した」というフィードバックがありました。専門職の方からは、理論的な内容で、いつもとは違った視点で興味深かったとの感想をいただきました。限られた時間でしたので、一人ひとりの姿勢を詳細に評価することはできませんでしたが、参加者全員と個別に対応させていただきました。

今回の講座では、運動学的視点で抱っことおんぶの解説を行い、後半は実際にみんなで練習を行いました。多少の知識と、姿勢の変化や感覚的な変化をお土産として持ち帰って頂き、少しでも不安なく、赤ちゃんとの生活に活かしていただけたなら幸いです。私は理学療法が専門のため、姿勢や動作を切り口とし、赤ちゃんと保育者に関わらせていただいています。今回は、このような機会をいただき感謝するとともに、これからも、赤ちゃんとその家族、その暮らしに丁寧に関わっていけるよう、努めて参りたい所存です。