理事長 小林哲朗
個人的には不妊治療そのものに助成するより、不妊の原因・背景にある障害を取り除くことが大事であると考えていますが、それでも敢えて不妊治療にお金を出すのであれば、いくつか条件を付けるべきだと考えます。
助成年齢の上限の引き下げ
一番は助成の年齢上限の引き下げです。今は一応43歳未満となっていますが、これを例えば初産は35歳未満、経産は38歳未満などにするということです。35歳を上限にするということは、35歳までに出産して下さいというメッセージを出していることになります。逆に43歳を上限にしているということは、43歳までは大丈夫ですよというメッセージを出していることになります。
40歳を過ぎれば妊娠率は下がりますし、先天異常の割合が高くなったり、流産の割合が高くなったりします。そして何より、考えるべきことは、妊娠出産はゴールではないということです。周りに人手があってサポート体制が十分だとか、金銭的に余裕があってかなりの部分を外注できるとかでなければ、体力が勝負の子育てを乗り切ることは容易ではありません。早ければ早いほどいいという訳ではありませんが、何歳でもいいと言うことはできません。
戻す受精卵は必ず一つにする
助成する条件の二番目は、体外受精で戻す受精卵は必ず一つにするということです。仮に多胎妊娠ということになれば、妊娠中の母子のリスクが高まりますし、未熟児で生まれるリスクも高まります。無事に生まれたとしても子育ても大変になります。自然妊娠でも多胎はありますが、敢えて選択することではありません。少し前に不妊治療で三つ子を出産したお母さんが子どもを殺す事件がありました。この時マスメディアが不妊治療のあり方を全く指摘せず、多胎育児の大変さばかりを取り上げていたのは本当にひどいものでした。二つ以上戻した場合は、助成金を支払わないとか、委託事業書から外すなどの強い措置が必要だと思います。
(会報誌「満月」2020年9月号に掲載)