食養指導士 小林哲朗
今年は沖縄・奄美をのぞく全国で梅雨の期間が極端に短く、6月関東地方の梅雨明けは平年より3週間も早くなりました。各地で6月から真夏日が続く異例の年となりましたが、体が暑さに慣れていないうちに急に暑くなったことで、例年より熱中症のリスクが高まりました。
平均気温は百年で1℃以上上昇
気象庁によると、日本の年平均気温は、様々な変動を繰り返しながら上昇しており、長期的には百年あたり1.28℃の割合で上昇しています。特に90年代以降、高温となる年が頻出しています。特に都市部ではヒートアイランド現象により年平均気温は長期的には百年あたり2~3℃の割合で上昇しています。ちなみに世界の年平均気温は百年あたり0.73℃の割合で上昇しています。
熱中症の死亡者数は増加傾向
熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指します。症状は、だるさやめまい、吐き気、けいれんなどがあり、重症になると命に関わることもあるので注意が必要です。
熱中症と混同されがちなのが脱水症。脱水症は、身体の中の体液が減ってしまっている状態を指します。これは下痢や嘔吐、インフルエンザで高熱にさらされた時などにも起きますので、脱水症は必ずしも暑い時期に起きるものではなく、冬にも起きることがあります。脱水症が進むと熱中症になります。
熱中症の被害はその年の夏の暑さに左右されますので、年によって状況が大きく異なりますが、熱中症の死亡者数は近年増加傾向にあります。そしてその内訳をみると、全体の8割が65歳以上の高齢者となっています。
子どもは大人より暑さに弱い
人は体温が上昇すると汗をかきます。これは汗が蒸発する時に体内の熱を逃すことで体温を下げる仕組みです。また毛細血管が拡張し、体の中の熱を体表へ移し、皮膚から外へ熱を逃がします。一般的に子どもは大人より暑さに弱いと言われています。これは子どもは汗をかく能力がまだ十分に発達していないことや、体重当たりの体表面積が大きいため外気温の影響を受けやすいこと等の理由からです。
熱中症や夏バテを防ぐには
35℃以上の猛暑日になることも珍しくないくらい、最近の夏の暑さには厳しいものがあります。気温も湿度も高い日本の厳しい夏を乗り切るには体調管理が欠かせません。食事をきちんと取るということは基本的なことですが、夏は代謝が落ちるので食欲が減り、麵類だけで済ましてしまうということもありがちですが、少なくとも1日1回は、ご飯と味噌汁、おかずの食事を取りたいものです。
また夏は冷房の効いた屋内と炎天下の屋外の温度差が大きいため自律神経が乱れやすく、それが夏バテなどの体調不良につながります。冷房は外気温との差を5~8℃程度を目安に適切に使い、夜はぬるめのお湯にゆっくりつかって自律神経を整えるのがいいでしょう。
積極的に取りたいビタミンB群
ビタミンB群にはさまざまな働きがありますが、糖質・脂質・タンパク質という三大栄養素の代謝において重要な役割を果たすため「代謝ビタミン」とも呼ばれます。その中でも、糖質の代謝にはビタミンB1が大きな役割を果たします。夏はどうしてもジュースやアイス、麵類などを食べることが多く、いつもよりビタミンB1の消費が激しくなりますので、積極的に摂取したいものです。
ビタミンB1を多く含む食材として有名なのは豚肉があります。またこの時期はウナギもよく店頭で見かけます。植物性の食品では枝豆や大豆、小豆、落花生などの豆類や玄米胚芽や小麦胚芽などの穀類、ナッツ、海藻などに多く含まれます。江戸時代は夏によく飲まれていたという甘酒は、ビタミンB群やアミノ酸、ブドウ糖、食物繊維などが豊富で飲む点滴呼ばれていて、私たち現代人にもおすすめです。
まずは食事から水分・栄養補給
熱中症対策として水分をこまめに取るというのがありますが、まず何よりも食事をしっかり取ることが大切です。ご飯は約60%が水分ですし、野菜も水分をたくさん含んでいます。特にナスやトマト、きゅうりなどの夏野菜の多くは水分が90%以上です。また味噌汁を飲めば、水分と同時に汗で失われる塩分も補給できるので一石二鳥です。
- 十分な睡眠を取る
- 食事をしっかり取る
- 冷たい飲み物・食べ物を取り過ぎない
- 冷房は外気温との差を5~8℃を目安に
- お風呂はぬるめのお湯にゆっくりつかる
適度に汗をかく環境を
子どもは暑さに弱いので熱中症に注意は必要ですが、かと言ってずっと涼しい環境にいるのも問題です。汗をかく能力は3歳くらいまでにある程度決まると言われています。適度に汗をかく環境を作ることも大切です。冷房の目安としては、体調を見ながら、室内温度が28℃を超えないくらいにし、朝夕の比較的涼しい時は少し外で遊ぶというのが良いのではないかと思います。ポイントは、汗をかいた後はシャワーを浴びたり、拭いたりして清潔にすることです。
夏は海や川、山などに出掛けたり、祭りや行事に参加したりと普段とは違うことで楽しむ機会がたくさんあります。体調管理に気を付けて思いっきり楽しんで下さい。