前回は化学物質が経皮吸収されるしくみについて考えましたが、だからといってどんな化学物質でも体内に入り込んでくるというわけではありません。経皮吸収されやす
い条件が整った時に幾つかの化学物質が取り込まれることになります。一回に取り込まれる量は多くないかもしれませんが、経皮吸収された化学物質は排出されにくいので、
繰り返し取り込まれると徐々に体内に蓄積されることになります。そしてその量が一定量を超えると、蓄積した化学物質の影響が目に見える形で現れることになります。
経皮吸収される分子の大きさ
細胞膜の主成分はリン脂質で、水に溶けにくいという性質があり、また大きな分子は通さないという特性を持っています。逆に言うと、脂溶性の小さな分子は細胞膜や細胞の間を通過しやすいということができます。溶解補助剤として使われるプロピレングリコールや合成界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムなどは分子量が小さく、これらが皮膚のバリア機能を低下させることで、他の化学物質が体内に吸収されやすくなります。
体の部位による吸収率の違い
体の部位によって経皮吸収率は異なります。当然角質層が薄い部位ほど吸収されやすくなります。経皮毒の著者竹内久米司氏によれば、腕の内側の吸収率を1とした時、手のひらは0.83倍、かかとは0.14倍、頭は3.5倍で、背中は17倍ということです。そして最も吸収率が高い部位は性器で、なんと42倍も吸収率が高くなっています。また口の中や肛門は粘膜で覆われていて角質層がないので、皮膚のバリア機能がまったく働かず、より吸収されやすいと言えます。
入浴中は危険がいっぱい
皮膚の温度が高いほど、さらに角質層の水分量が多いほど経皮吸収されやすいため、入浴時は特に経皮毒のリスクが高まります。性器や背中の経皮吸収率が高く、シャンプー、リンス、ボディーソープ、入浴剤など合成界面活性剤が入った製品がたくさんあるからです。
化学物質が経皮吸収されやすいおもな条件
合成界面活性剤・溶解剤
皮膚のバリア機能が低下します
分子の大きさ
分子量(分子の大きさ)が小さいものほど吸収されやすい
量・濃度
肌に触れる量が多いほど、濃度が高いほど吸収されやすい
部位
角質層が薄い部位ほど吸収されやすい
皮膚温度
皮膚の温度が高いほど吸収されやすい
年齢
小児や高齢者ほど吸収されやすい
(会報誌「満月」2021年7月号に掲載)