皮膚の構造と機能
皮膚は表皮、真皮、皮下組織から成ります。厚さは2ミリ以下ですが、その表面積は大人の場合は平均で畳1枚分にもなり、重さも体重の16%を占める人体で最大の器官です。表皮の一番外側の角質層はケラチンやセラミド脂質という物質のかたまりが層状になったもので、外から内部を守るバリア機能を果たします。

保護作用
皮膚の最大の役割は、体内の組織や臓器を保護することです。外界からの異物の侵入を防ぎ、物理的な力や紫外線などの刺激から身を守っています。また体内からの水分の喪失を防いでいます。
分泌作用
汗や皮脂を分泌し、皮膚の乾燥を防いだり、細菌の繁殖を防いだりします。
体温調節作用
暑い時には汗を出して体温を下げ、寒い時には立毛筋を収縮させて体温の低下を防ぎます。
排泄作用
汗をかくことで体内の老廃物を外に出します。
知覚作用
触覚や痛覚、温度覚、圧覚、かゆみなどの感覚をとらえます。感覚は中枢神経に伝わります。
皮膚から化学物質が吸収されるしくみ
葉っぱの中に水を入れる
化学物質はどうやって皮膚のバリア機能を乗り越えて私たちの体の中に入っていくのでしょうか。植物の葉っぱに例えて考えることができます。葉っぱに水滴を垂らすと水玉ができます。これは葉の表面がワックスで覆われているからです。これは皮膚の保護作用の働きと同じです。では、葉っぱに水を入れるにはどうしたらいいでしょうか。方法は2つあります。

1.葉のワックスを溶かす液体(溶媒)をかける
ワックスは水に溶けないので、それを溶かすためには油と相性の良い液体を使うことが出来ます。よく見かけるのは有機溶剤です。
2.合成界面活性剤で葉の表面を拭く
界面活性剤とは、水になじみやすい部分と油になじみやすい部分の両方を持つ物質のことで、水と油のように本来混ざり合わないものを混ぜて、表面張力を弱める働きがあります。葉っぱを合成界面活性剤が入った台所洗剤などで拭くと水が入りやすくなります。
バリア機能がなくなると・・・
上記1、2どちらの場合も、その後にもう一度葉っぱに水滴を垂らすと、もう水玉はできず、水は中に浸透します。さらに赤い色のインクを垂らすと葉っぱは赤色に染まります。皮膚から化学物質が吸収されるしくみと同様なのは2のケースです。合成界面活性剤が入った合成洗剤で洗い物をしていて手が荒れるのもこのためです。
(会報誌「満月」2021年5月号に掲載)