
経皮毒とは
「経皮毒」とは、竹内久米司氏と稲津教久氏が2005年に出した著書の中で使った言葉で、化学物質が皮膚から吸収されて、体に有害な反応を及ぼすことを表す造語です 。
「 経皮毒」の著者の一人竹内氏は、永年製薬会社研究部長として医薬品の研究開発に従事し、日本薬理学会学術評議員なども務めましたが、本を出版した理由として、ある時シャンプーなどの日用品に皮膚から吸収される化学物質がたくさん含まれていることに気付き、「これは危ない、大変だ。何とかしなければいけない」という思いからだったと言っています。
その後も経皮毒という言葉を使った本がいくつも出て、普段使っているシャンプーやリンス、台所用洗剤、化粧品が危ないということで話題になり、その安全性を意識する人が増えましたが、経皮毒の考え方自体はそれよりずっと前からありました。私が初めて知ったのは、30年以上前の学生の時でした。たしか経口摂取したものは比較的排出されやすいが、経皮吸収したものは排出されにくいというような言い方をしていたように記憶しています。
経皮吸収はなぜこわい
経口摂取
環境中から、いわゆる化学物質が体内に入る経路は主に3つあります。一つ目は口からです。食べ物に気を付けている人は多いのではないかと思いますが、口から入ったものは肝臓で代謝されるため比較的排出されやすくなっています。
五感で危険なものを避け、胃で消化、小腸で吸収する
肝臓で解毒(代謝)
腎臓から排泄
呼吸吸収
二つ目は呼吸からです。呼吸から入った化学物質は肝臓というフィルターを通らないで、肺粘膜から直接体内に吸収されます。血液に乗って体内を循環し、その後肝臓で代謝されます。体内に存在する環境化学物質の80%は呼吸から入るといわれています。最近は香りの害、すなわち「香害」が社会問題として意識されつつあります。
肺粘膜から吸収
経皮吸収
そして三つ目が経皮吸収です。私たちの体は皮膚で覆われていますが、皮膚の唯一のバリア機能が角質層です。角質層を通過した環境化学物質は肝臓を通らずに皮下の脂肪組織に蓄積します。その後徐々に全身に運ばれ代謝されますが、長期間にわたり滞留します。
皮膚の表皮の角質層から吸収
DDTなどの農薬やPCBはかなり前に製造・販売、輸入が禁止となりましたが、今でも私たちの体に蓄積されており、特に妊娠・出産・授乳を通して赤ちゃんに移行、その後の孫世代にも影響を及ぼす可能性があるという問題は深刻です。
(会報誌「満月」2021年3月号に掲載)

