産科オープンシステムは普及するか

(2004年10月20日)
小林 哲朗

9月11日に日本産婦人科医会(以下医会)は、「産科オープン・セミオープンシステムに関する現状における日本産婦人科医会の考え方」を発表しました。医会として、産科オープンシステムを順次推進すべきという方針が打ち出したもので、10月14日付け読売新聞の夕刊でも、一面トップで、「お産が変わる」という見出しで紹介されました。健診は診療所で行い、出産は病院でという形を目指すということで、もし、これが普及すれば、まさに日本のお産は変わることになります・・・。これまでは、厚生労働省が産科オープンシステムの普及を目指しているが、日本産婦人科医会が反対しているという構図があったと思うのですが、これを反対しないという態度に変わったということのようです。厚生労働省は、2005年度に予算4900万円を取り、オープンシステムのモデル事業を行なう予定です。

産科オープンシステムとは

医療でいうところのオープンシステムとは、総合病院など、大きな病院を開放(オープン)し、診療所の個人医などがその設備やスタッフを利用できるようにする仕組みのことをいい、欧米ではかなり一般的に行なわれているそうです。産科のオープンシステムは、妊婦健診は診療所で行い、お産は病院で行なうもので、診療所の医師が主治医として立ち会うこともできます。欧米のオープンシステムの場合、入院中もホームドクターが往診し、その患者に責任を持ちますが、日本の場合は、入院先の病院がケアすることが多いという違いがあります。ただ、産科に関していえば、欧米の場合、1~2日で退院することがほとんどなので、あまり関係ないことといえます。

厚生労働省の考え

平成15年度から、厚生労働科学研究班により、「産科領域における安全対策に関する研究」が進められ、その中で産科オープンシステム病院の普及が言及されています。医療施設ごとの役割を明らかにし、ハイリスク妊娠はできるだけ周産期医療センターで扱い、診療所は、産科医が1人の場合は、できるだけオープンシステム病院を利用し、産科医が複数いる場合は、ローリスク妊娠を取り扱うのが望ましいという考えがあるようです。ローリスクやハイリスクを区別するガイドライン等は、2005年度から行なわれるモデル事業の中で作成していくということです。

日本産婦人科医会の考え

オープンシステムについては、開業医の反発が強く、日本産婦人科医会では新たな部会を作り、この件について議論を重ねてきたようですが、このままでは安全性を確保し続けることが難しいとする判断などから、オープンシステム順次推進すべきという考えを打ち出しました。ただ、地方と大都市とでは、施設の数や分布状況が大きく異なっていて、各施設間に距離がある、地方の中小都市・郡部にオープンシステムが普及するには、かなりの時間を要すると見ています。しかし、いずれにしても、そういう流れは避けられないと判断して、推進という立場を取ったものと考えられます。

お産のシステムを考えるいい機会

産科オープンシステムが良いか、悪いかは別にして、これはお産のシステムを考えるいい機会だと考えています。自然なお産ができる施設の普及を目指す立場からすると、現在の状況が安定して続くというのは、非常に困ったことです。そういう意味で、変革自体が期待されることであり、オープンシステムは、その方向性は間違っていないと考えています。是非ここで、消費者の考えを取り入れるように、働きかけて行きたいところです。

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