出産環境向上にむけて

病院における正常と異常の役割分担

提案

病院においては、妊娠が正常に経過しているケースは助産師、リスクが高いケースは産科医が管理するように役割を分担する。

期待できる効果

  • 産む側主体のお産につながり、お産の満足度が上がる
  • 過剰医療の懸念が緩和される
  • 産科医が異常の対処に集中することができる
  • 産科医の負担が軽減される

課題と問題点

◆助産師の意識と能力にバラツキがある

妊娠が正常に経過しているケースを助産師が管理し、助産師だけで取り上げることは法的に何ら問題がありません。昔の産婆は皆行っていましたし、今でも助産所で行われています。しかし現在の助産師教育では、医師の直接の管理・指導のもとに業務を行うことが前提とされているので、助産師である以上、より積極的にお産に関わりたいという人ももちろんいますが、助産師を看護師の延長としてのみ考えている人も少なくありません。このため、助産業務に対する意識や、妊娠・分娩の管理能力は、助産師によって大きく異なり、現状維持を望む助産師が相当数いるものと考えられます。

◆妊産婦の不安

産科医が、妊娠が正常に経過しているケースを含めて、ほとんど全ての妊娠・出産の管理を行うようになって久しいので、たとえ妊娠が正常に経過しているとしても、ほとんどを助産師だけで管理するということに対しては、妊産婦の多くは少なからぬ不安を抱くと考えられます。

解決策

(1)より専門性の高い助産師の養成

より専門性の高い助産師を養成し、正常範囲の妊娠・出産の管理を担ってもらう。

関連コラム:助産師のはなし-新しい資格制度の提案

(2)病院内助産システムの導入

病院の中に、産科医が管理する通常のコースとは別に、助産師が管理するコースを設ける。

お産プランを立てよう:新しいお産のかたち

(1)と(2)を比較した場合、本来は(1)の方が望ましいと考えられますが、その実現は容易ではありません。(2)は制度等を変える必要がない分ハードルが低いと言えますが、院内に2つの態勢を作らなければならないので、資金と人材の確保が必要となります。

いずれの場合でも、どこまでが正常範囲で、どこからを異常の範囲とするのか、すなわち、どこまでを助産師が取り扱うのかをガイドラインとしてきちんと決め、それを産婦も理解しておくということがとても重要になります。

開業を目指す助産師向けの教育を

助産師には開業権があり、有床の助産所又は出張して主に産婦の自宅でお産を取り上げています。1年間に生まれる赤ちゃんの約1%、1万人ほどが助産所で生まれています。

しかし前述したように、現在の助産師教育では、病院や診療所において、医師の直接の管理・指導のもとに業務を行うことが前提とされているので、助産所でお産を取り上げるための教育としては決して十分とは言えません。

妊婦が安心してお産に臨めるためにも、開業を考えている助産師のためにも、新しい公的な資格の創設や研修等による認定制度の導入など、何らかの方法で、開業を目指す助産師向けの教育を行うことが必要だと考えます。

関連コラム:助産師のはなし-新しい資格制度の提案

出張助産所にも嘱託医、嘱託医療機関を

お産を取り扱う助産所は、産科又は産婦人科の医師を嘱託医師として定めること、及び緊急時に対応する嘱託医療機関を定めることを義務づけられています。(医療法第19条、医療法施行規則第15条)

しかし、医療関係者でも知らない人が多いようですが、実は出張のみで業をなす助産師の場合、このことは適用されません。といいますか、こうした、いわゆる出張助産所には、そもそも嘱託医を定める必要がないのです。(昭和23年12月27日 医第427号)

その理由は、「出張のみによって業務に従事する助産師については、医療法第六条の七、第八条及び第九条の規定を適用する場合にのみ、その住所を助産所とみなすのであって、その他の場合は助産所とみなされないから嘱託医師を置く必要はない。」というものです。(

出張のみの助産所の中で、実際に嘱託医や嘱託医療機関を定めていないところがあるのかどうかは分かりませんが、定めることが義務になっていないこと自体に問題があります。嘱託医や嘱託医療機関を定めるのは、お産の安全性を高めるためであり、この意味において、出張のみの助産所が例外とされているのは、いかにも不自然なことです。母子の安全のために、できるだけ早期に、出張のみの助産所にも嘱託医等を定めることを義務づけるべきだと考えます。

)医療法第六条の七は助産所の広告に関する規定、第八条は助産所の開設に関する規定、第九条は、助産所を廃止するときの規定。

このページの先頭へ
© 2004-2013 お産子育て向上委員会.