不二家の不正発覚の後、しばらく落ち着いたかに見えた食品の偽装問題でしたが、ミートホープ事件を発端にして再燃、白い恋人、赤福、比内地鶏、吉兆、と次々に問題が明るみになり、もはや完全に炎上した感があります。
こうした食品偽装の相次ぐ発覚は、内部告発が増えたことによります。内部告発は非常に勇気のいることです。雪印の不正を告発した会社は、多くの嫌がらせやイジメを受けて、その後に取引が激減、一時休業にまで追い込まれました。それにも関わらず、内部告発が増えているのは、従業員の間に、食品偽装は社会に対する裏切り行為だという意識が強くなってきている表れなのかもしれません。一方で、過去の大きな不正事件発覚から何の教訓も得ずに、その後も、同じようにずっと不正を繰り返していた経営者、管理者の神経には、ほとほと呆れてしまうの一言しかありません。
ミートホープの事件は極めて悪質で、賞味期限の改ざんなどを行っていた他のケースとは別に考えた方がいいとは思いますが、いずれにしても、こうした偽装が、残念ながら、多くのメーカーで、日常的に行われているということは明らかのようです。
余程の人でない限り、野菜でも肉でも、物を見ただけで、その産地や素性を見分けることはできませんから、食品表示は、その食について、消費者が知りうる最大の情報源といえます。それだけに、その表示が信じられないとなれば、消費者はいかんともし難くなります。
このような状況で、私たちのできることはどんなことがあるでしょう。食品偽装は許されない行為であるという社会的な意識を高めることや、偽装がありうるという前提の下に、疑わしいものには手を出さない、品を見定める目を養うなど、基本的な自衛能力を磨くといったことが考えられるでしょうか。こうしたことは、大した役に立たないようにも思えますが、どこかに任せようとしても、私たち自身がもっと食に関心をもって、賢い消費者にならない限り、似たようなことはきっと繰り返されるにちがいありません。そういう意味で、消費者が意識を変えるということが、とても大きいと考えています。もちろん、行政による、メーカーや小売店の監視や指導を強化や、不正に対する罰則の強化といったシステムの整備も当然必要になってくるでしょう。
賞味期限切れの商品の包装を張り替えて再出荷することは、おそらく相当多くの所がやっていると思われます。20年ほど前、私がアルバイトしていた製菓店でもやっていました。羊羹は製造年月日が古くなったものを回収してきて、包装だけを張り替えます。饅頭は、原料を入れると自動的に作れる機械に再投入すれば、またできるそうです。無駄になるのは紙だけだと、社長が自慢げに話していたのを思い出します。(ついでながら、その社長は、サブレだけは、味が変わってしまうので、再利用することができないと、かなり残念そうに話していました。)
当時、私は学生で、社長の話にかなり驚きましたが、モラルの面で問題はあるけれど、健康に被害が出るとも思えないし、この業界は、まあそんなものなのかと思って、やり過ごしていました。実際、昔はその程度のことはザラにあって、見つかっても、「しょうがないやつだなあ」くらいで済んだのかもしれません。ただ、今はさすがにそれでは許されません。まだ食べられる物を、少し古くなったからといって捨てるのは、経営者でなくとも、やはりもったいないと思います。しかし、だからといって偽装表示は許されるものではないですから、そうならないように生産・在庫の管理をする、経営努力が必要とされるのでしょう。
生産者の顔が見える野菜、食品というのが時々お店で売られています。顔だけ分かっても、生産の過程が分からないとあまり意味がないとも思うのですが、確かに、原材料を含めた生産者から消費者までのルートがあまりに長くて複雑だと、どうしても変なことが起こりやすくなってしまうという気はします。誰だか分からない不特定多数の消費者のために、利益を削ってまで正義を通したり、敢えて大変な作業を行ったりするということは、誰にでもできることではないと思うからです。
