奈良県橿原市の妊婦が、救急搬送の受け入れを相次いで断られて、死産した問題をきっかけに、かかりつけ医を持たない、つまり妊婦健診を受けない妊婦が増えていることが明らかになり、千葉市でも、かかりつけ医のいない妊婦が、10回以上受け入れを断られるという問題が起きていたとの報道がありました。
市内には、救急搬送を受け入れられる病院が、それ程たくさんは無いので、もしかして、診療所にも連絡しているのだろうか、また、かかりつけ医がいないとは、どういうことなのかなど、分からない点や確認したい点が幾つかありましたので、千葉市消防局に、問い合わせてみました。
それによると、消防隊はまず、患者にかかりつけ医のことを聞き、かかりつけ医がいる場合は、そちらに搬送します。また、転院の場合は、施設間で、受け入れ先を調整するので、消防の方で、施設を探すことはないそうです。それ以外の場合、つまりかかりつけ医がいない場合に、患者の容体を判断して、それに見合う施設を近い所から探すということでした。
この時、かかりつけ医がいないからといって、なぜいないのかまでは聞かないので、その理由は分からないとのことです。また、「かかりつけ医が、いないということは、妊婦健診を受けていないということですか」という私の質問には、必ずしもそうでは無いのではないかという答えでしたが、具体的にどういう場合が考えられるのかについての説明はありませんでした。
搬送の回数については、延べ数で、その内容についてまでは、記録していないということでした。つまり、仮にある病院に連絡した所、今忙しいから、少ししてからまた掛けてと言われ、5分後にまた掛けて、結局断られた場合、2回拒否されたということになるということです。
妊婦の救急搬送拒否とか、十数回もたらい回し等の報道を見ると、とても心配になりますが、この話でいくと、かかりつけ医さえ持っていれば、少なくとも今の所は、妊婦が必要以上に、不安になることはないといえます。問題は、かかりつけ医を持っていない、つまり、妊婦健診を受けない人です。
そもそも何故一度も、妊婦健診を受けないのでしょうか?妊婦健診に行きたくない理由は幾つか推測できます。まず第一に、面倒臭い。赤ちゃんがお腹にいることだけで難儀なのに、毎月、妊娠後半になれば、月に何回か病院や診療所に通うのは、かなり大変です。
次に、金銭的な理由も挙げられるでしょう。お産は、病気ではないので、基本的に保険が利かないので、毎回の健診料がかなり高くなります。出産一時金は健康保険から出ますが、健診料までは、カバーされないので、1回5000円前後の健診料を何回も払うのは、やはり大変なことです。因みに、お産直前に、飛び込みできた人は、費用を払わないで逃げることが、少なくないという関係者の証言もあります。
他に、最初の、面倒臭いということとも関係があると思うのですが、健診にとても時間がかかるということも、健診が嫌われる要因になっていると考えられます。産科施設が減っているということもあり、どの施設も待ち時間は長くなっており、半日かかる場合も、少なくないようです。これでは、できることなら、行きたくないと思ってしまうのも無理ないかもしれません。
しかし、こういう理由は、健診の回数を減らす要因になったとしても、一度も健診を受けない理由になるのかどうか。かかりつけ医のいない妊婦は、全国的に増えているようなので、どういう理由で妊婦健診を受けないのか、一度調査するべきでしょう。
ここで改めて、妊婦健診のことを考えてみた時、今のような健診の回数が必要なのかという疑問を持たずにはいられません。特に、「3時間待って、3分の診療」と揶揄されるような健診が常態化しているようであれば、余計にそう感じます。こんな健診なら、どうでもいいのではないかと思ってしまう人が出てきても不思議ではありません。私は、これを機に、妊婦健診の内容やその回数が適切かどうか、検討するべきだと考えます。
いずれにしても、検査を受けないと、感染症にかかっているかどうかや、赤ちゃんの異常のあるなし等も分からないことになり、危険が高まることは間違いありません。例えば、妊婦がエイズにかかっていたとしても、事前の投薬と帝王切開など適切な処置を行えば、母子感染をほぼ防げるといいますが、健診も受けず、飛込みでお産となれば、そのような処置もできないことになってしまいます。しかも、今回の一連の報道でも明らかなように、母子の状態が全く分からないお産を受けるのは、施設としては相当リスクが高いので、どうしても及び腰になりがちで、受け入れ先がすんなり決まらないことも当然予想されます。母子の安全を図るために、妊婦には、早い時期に、出産施設をきちんと決めて、必要最低限な健診を受けてもらいたいものです。それには、産科医や行政も協力して、妊婦健診の必要性を周知させるよう努めるべきでしょう。母子手帳を渡す時に、かかりつけ医を持つ必要性を説くチラシも一緒に配布するなどしてもいいかもしれません。
最後に一言。救急搬送の受け入れ拒否が問題とされていますが、むしろ、特に異常があるわけでもなく、ただ陣痛が始まったというだけで救急車を呼ぶことの方が、救急車の適正利用という点で問題ではないでしょうか。これが容認され、皆が利用することになれば、救急車が本当に必要な人が利用できなくなり、大変なことになるかもしれません。
