妊婦健診の大切さについて

助産師 内堀由美子

先日、新生児訪問で伺った先で、「抱き癖がつくから」と赤ちゃんが泣いても絶対に抱かず、授乳は時間で与えるという育児をされているAさんにお会いしました。生後2週間経過しているのに赤ちゃんの体重が退院時より10gしか増えておらず、泣きすぎて、余計にカロリーを消費していることは想像に容易な状況です。同席されたおばあさんのほうがへとへとの様子。きっと、孫を抱き上げたら、Aさんに怒られるのでしょう、「助産師さんなんとかして…」という視線を感じます。Aさんは、医療職で、社会的地位の高い、キャリアも経済力もある思慮深そうなお母さんです。

「まだ抱き癖を信じている現役のお母さんがいるなんて…!!」お母さんの優秀な様子とのギャップにしばし驚きつつ、抱き癖はないこと、授乳は児の欲するままに飲ませること、吸着を少し修正して、1週間後に再訪問のお約束をして訪問終了しました。そのお母さんも体重が増えていない事実を目の前に、方針を変えてくださり、1週間後に訪問した際は体重も増えAさん親子、祖母も含め家族の距離感もぐっと縮まったようでした。

この一件で思ったのは、私と出会うより前に、このお母さんが本当の知識を得る機会があるとすれば、いつだったのだろうということです。もし妊娠中に知っていたら、大変な2週間を過ごさなくてもよかったのではないかと。そうすると、やはり、妊婦健診の意義は大きいと思います。若草助産院では妊婦健診にじっくり時間をかけます。ちょっとした不安や疑問など話しは続き、1時間はあっという間です。そしてその時だけではなく、その後の健診、出産、退院、一ヶ月健診までずっと続くので、妊婦さんの全体像を把握しやすく、その方が疑問を持たれるであろうことも、ある程度予測はつき、タイムリーに情報を発信できることは、助産院の魅力だと改めて思いました。

Aさんには「助産師は単に産婦人科医の助手だと思っていましたが、医師には到底及ばない分野を受け持つ専門職なのですね」という言葉を頂きました。そう、助産師は出産と育児を支える専門職、そのことを胸に刻み、これからもお母さんのそばに寄り添ったお手伝いをしていきたいと思います。

(会報誌「満月」2012年6月号に掲載)

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