和食の世界無形文化遺産登録と学校給食

理事長 小林哲朗

「和食」が、この12月に世界無形文化遺産に登録される見込みです。和食が世界に認められることは喜ばしいことですが、肝心の日本では和食離れが著しい状況にあります。この登録をきっかけに、日本でも和食の良さが見直されることが期待されていますが、その手段として、まず学校給食の献立を和食中心に変えていくことを提案します。

和食離れ、コメ離れ

カレーやハンバーグ、スパゲッティーといった洋食メニューが好まれるだけでなく、そもそもお米が食べられなくなってきており、和食離れとコメ離れが同時に進行しています。朝は毎日パンという家庭が増え、子どもが通う小学校や保育園のアンケート調査でも、半数以上の家庭で朝はパン食という結果が出ています。

米の一人当たりの消費量はピーク時の半分近くになっているといわれ、最近では「パンの消費額がコメの消費額を上回った」との報道もありました。コメの消費量が減ってきた理由には、昔に比べて食材が豊富になったことや、生活スタイルが変わって料理に時間をかけなくなったことなど、様々なことが影響していると考えられますが、国を挙げてのパン食推進運動や、完全パン食の学校給食が与えた影響も非常に大きいと言えるでしょう。そして、その影響は今も続いています。

●学校給食で、子どものうちからパン食に慣れさせる。

●コメが余ったといって減反政策を行う。コメ農家に補助金を支払う一方で、学校給食ではパンを出す。

●広大な水田が広がる稲作地帯でも、子ども達は学校給食でパンを食べる。

●パンに慣れた子ども達は、大人になってもパンを食べ続け、そして自分の子どもにもパンを食べさせる。

完全に負の連鎖です。

「コメ離れ」というと、何となく自然になったような印象を受けますが、そもそも国の政策でパン食、牛乳を推進してきたわけで、この言葉には非常に違和感を感じます。学校給食は、おそらく、こうした政策を行った人たちの想定以上の効果があったに違いありません。まずはこの負の連鎖を断ち切らなければいけません。

和食の見直しは学校給食から

学校給食では、既得権益者や業者の利益が常に優先されてきました。学校給食に触れる事はタブーとなっているようですが、和食を見直す有効な手段としては、学校給食を活用するのが一番です。といいますか、実際それ以外の方法では相当難しいのではないかと私は思っています。

やることはいたって簡単です。今のように、栄養バランスばかりを強調して、机上で食材や料理を組み合わせた献立にするのではなく、一汁三菜の普通の和食を提供すればいいだけです。大人はいろいろな理由で反対するかもしれませんが、子どもたちは、案外すぐに慣れるはずです。和食はもともと日本人に合った食事なのですから当然です。

一方で大人はそう簡単には変わらないでしょう。洋食に慣れ親しんできた親の世代が、子どもたちに和食を作ってあげるというのは、すぐには難しいかもしれません。そういう意味でも、全体を変えていくのには、時間はかかると思います。何十年もかけてこういう状況を作ってきたのですから、それは仕方がないでしょう。少しずつ時間をかけて、和食を取り戻していかなければいけないのだと思います。

和食の世界無形文化遺産登録が、国民全体で和食を見直すきっかけにしてほしいと強く思います。そして、まずその第一歩として、学校給食を和食中心に変えていくことがとても大切です。米の消費量が減っても、食料自給率が減っても、相変わらず学校給食ではパンを出し続けてきました。

和食が世界無形文化遺産に登録されても、学校給食でパンを出し続けるという愚行を繰り返してはいけません。学校給食を変えることができないようであれば、和食文化を継承するという宣言は、本当に口先だけのことと言われても仕方がありません。とても簡単なことです。学校給食のパンをご飯に、牛乳を味噌汁に変えればいいのです。

(会報誌「満月」2013年11月号に掲載)

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