エコチル調査について

「エコチル調査(子どもの健康と環境に関する全国調査)」は、平成20年度からパイロット調査が始まり、平成22年3月に基本計画が出され、23年1月から実施された、環境省が行う初のライフサイエンス分野のプロジェクトです。

「環境中の有害物質が子どもたちの発育や健康に対し悪影響を与えているのではないか」という懸念が国内外でもたれている中、1997年のG8環境大臣会合「マイアミ宣言」で子どもの環境保健は最優先事項、大臣の権限において環境研究、リスク評価、基準の設定等を実施することが表明されました。2006年に国際化学物質管理戦略(SAICAM)で「子ども、胎児を彼らの将来の生命を損なう化学物質の曝露から守る」方針が決まり、2009年のG8環境大臣会合で「子どもの健康と環境に関する大規模な疫学調査を各国が協力して取り組むことが合意」されるという国際的な背景があります。しかし、日本の取り組みはシンポジウムや提言などなされたものの、2007年にようやく安全性情報の収集、把握及びモニタリング強化の提言、子どもの健康と環境に関する検討会が設置され、このエコチル調査に至った、というわけです。

エコチル調査では全国で十万人の子どもを、胎児期から13年、遺伝要因、社会生活習慣要因を含め追跡調査をします。「化学物質曝露」が1.性の決定、2.妊娠の異常、3.成長障害、4.先天奇形、5.精神神経発達障害、6.免疫系の異常、7.代謝・内分泌系の異常、8.不妊、9.脳の形態異常に影響する。また、10.「騒音曝露」が精神神経発達障害に影響する、という10の仮説がたてられ、子どもの健康に影響を与える環境要因の解明、リスク管理体制の構築などが成果として期待されています。仮説は2008年に国民に公募を行い、一般から53件、専門家から83件寄せられたようです。(下表参照)

懸念された環境因子健康項目と件数
一般から 専門家から
農薬(22)
食品添加物(14)
電磁波(13)
シックハウス(12)
排ガス(12)
殺虫剤(10)
医薬品(8)
化学物質(7)
大気汚染(7)
内分泌撹乱物質(37)
ダイオキシン・PCB類(26)
POPs(24)
農薬(9)
水銀(8)
殺虫剤、たばこ、クロム、
ヒ素、鉛(6)
不安が提示された健康影響健康項目と件数
一般から 専門家から
農薬(22)
食品添加物(14)
電磁波(13)
シックハウス(12)
排ガス(12)
殺虫剤(10)
医薬品(8)
化学物質(7)
大気汚染(7)
内分泌撹乱物質(37)
ダイオキシン・PCB類(26)
POPs(24)
農薬(9)
水銀(8)
殺虫剤、たばこ、クロム、
ヒ素、鉛(6)

一般の方からは電磁波の影響への懸念もあげられていますが、エコチル調査ではエンドポイントとして言及される子どもの白血病や脳腫瘍の発生頻度が低いこと、本調査の設計上、科学的な解明は不可能であることを理由に、取り上げられていません。

しかし、携帯電話についてヨーロッパを中心に世界では、英国では16歳以下は使用を制限し、フランスでは妊婦の腹部、若者の生殖腺には近づけない、12歳以下の子ども向け携帯電話の広告は禁止、6歳以下の子ども使用のために設計された携帯電話の販売を禁止しています。このように電磁波が子どもの健康を損なうと国民に注意を促す国が少なくないなか、子どもをターゲットにした産業を野放しにしている日本の現状は、とても残念です。

さて本筋に戻り、この調査は国家プロジェクトなので、「国民にわかりやすい資料を作成し、積極的に情報を発信していく」としています。しかし、21年間の長いプロジェクト。結果が出るまで国や自治体が無策で良い筈はありません。疫学調査は云わば「結果」の科学です。でも子どもは日々生まれ、成長してきます。化学物質曝露が子どもに有害という懸念があってスタートする調査なのだから「待ったなしの問題」として、速やかに環境の改善を図ろうとする国・自治体、そして社会であることが求められます。(中)

参考文献
子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)基本計画平成22年3月30日・エコチルWG基本設計班・環境省

(会報誌「満月」2012年1・2月号に掲載)

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