HPVワクチンの有効性・安全性について考える

理事長 小林哲朗

4月1日より、予防接種法の一部を改正する法律が施行され、新たにHib感染症、小児の肺炎球菌感染症及びヒトパピローマウイルス(HPV)感染症が定期の予防接種の対象となりました。しかしこのうちHPV感染症に対するワクチンについてはその有効性を疑問視する声や副作用に対する懸念が指摘されており、この時期における定期接種化は時期早尚であるとの意見も少なくありません。平成25年3月28日に行われた参議院厚生労働委員会で、生活の党のはたともこ議員が行った質疑をもとに改めてHPVワクチンについて考えてみました。

HPVワクチンの有効性

HPVの感染率については、国立感染症研究所が2010年に発表した「HPVワクチンに関するファクトシート」の中に、海外においては性活動を行う女性の50%以上が、生涯で一度はHPVに感染すると推定されているとの記述がありますが、日本の研究者が海外の医学系雑誌で発表した報告には、日本の一般女性がHPVに感染する割合について、16型が0.5%、18型が0.2%と、1%にも満たない感染率であるととのデータがあることがわかりました。さらに、米国における3年間にわたる調査のデータで、HPVに感染しても、90%以上は自然排出され、2年以内に消失すると報告されています。

残りの10%のうち、持続感染し、前癌病変(将来がんになる可能性のある病変)の初期段階である軽度異形成になったとしても、大半は自然治癒するとされ、英国の医学雑誌ランセットに2004年に掲載された報告データによると、若い女性の軽度異形成の90%は3年以内に消失するとされています。また持続感染して中等度異形成、高度異形成へと進展したとしても、日本婦人科腫瘍学会のガイドラインによれば、適切な治療を施すことができれば、治癒率はおおむね100%であることも明らかになりました。

つまり、これらが正しいとすれば、HPVに感染したとしても、90%は自然排出され、仮に持続感染したとしても、軽度異形成の90%は自然治癒し、残りの10%についても、経過観察し、中等度異形成、高度異形成への進展の段階で適切な治療を行えばほとんどが治癒するということになります。はたともこ議員は同委員会の中で、「HPVに感染した女性の99.9%以上には効果、あるいは必要性がないワクチン」と指摘しています。

HPVワクチンの子宮頸がん予防効果について

今回の予防接種法の改正で、「子宮頸がん予防ワクチン」という名称が「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン」に変更になりました。この点について、はた議員は『「子宮頸がん予防ワクチン」という名称が必ずしも適切ではないということからだ』と指摘しています。

厚生労働省健康局結核感染症課が作成した子宮頸がん予防ワクチンに関するQ&A(平成25年4月)ではその点について、

『現時点では導入から間もないことから、子宮頸がんが減少するという効果の検証は困難ですが、
1.子宮頸がんの原因であるヒトパピローマウイルスの持続感染を予防する効果
2.がんに移行する前段階の病変の発生予防効果
は確認されています。』

とあります。

また同じQ&Aによれば、HPVワクチンの有効期間については、

『新しいワクチンであることから、現在、確認されている予防効果の期間は最長9年程度ですが、これまで有効期間は随時更新されており、今後も引き続き有効性の調査がされていく予定です。』

とあります。つまり、ワクチンの効果は今後検証されていくということなのです。

第17回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会議事録から抜粋(平成23年7月8日)

○倉田委員
前にも確か発言したと思いますが、日本の子宮頸がんの遺伝子型は随分違いますよね。そこで有効だという書き方が随分ありますが、有効というのは子宮頸がんにならないという意味で初めて有効と言えるので、これは書きすぎではないか。というのはメーカーの人が入ったシンポジウムのときに、初めて集団でやってみてからまだ7年だというのです。イギリスが12歳で始めて、まだ19歳なわけです。そうすると、子宮頸がんが大量に発生する世代ではないのです。それから10年、20年が経ったときに出るか、出ないか。それをいま「有効である」という書き方をすることは、私はちょっと。「期待できる」ぐらいのはまだいいとして、ウイルスの感染症で抗体があれば有効かというのは。随分違った感染症がたくさんありますから、そこのところはそれでいいかどうかというのが1つ。(中略)みなさん無邪気に万歳しているようだけれども、これはあと20~30年ぐらいしないと、有効かどうかは全くわからないですよ。メーカーの人も、何十年経って有効だということは、どなたも全く保証していませんよ。そこのところの書き方を気をつけたほうがいいと思います。

(・・・中略)

○北澤委員
先ほどの倉田先生のご意見、コメントに私も同感で、実際に今日見せていただいた実施要綱にも、「ヒトパピローマウイルスワクチン」と書いて、「以下、子宮頸がん予防ワクチン」と書かれています。一般の人がパッと見たときに、子宮頸がんがこれで予防できるのだと思いますが、それは期待されているとはいえ、まだ実証はされていないので、そのあたりの言葉の使い方についてどうかなと個人的には考えています。ヒブワクチンは微生物の名前+ワクチンという名前なので、HPVワクチンとかヒトパピローマウイルスワクチンで良いのではないかと思います。

HPVワクチンの副反応について

現在日本で承認されているHPVワクチンにはサーバリックスとガーダシルの2種類があります。3月11日に厚生労働省へ報告されたHPVワクチンによる国内での副反応の報告によりますと、サーバリックスが接種回数約684万回(推定273万人)のうち1,681件、ガーダシルが接種
回数約145万回(推定69万人)のうち245件とされており、サーバリックスにおいては1名の死亡例も報告されています。

単純な比較はできないものの、これはインフルエンザワクチンに比べて、サーバリックスは38倍で、そのうち重篤な副反応は52倍、ガーダシルは26倍でそのうち重篤な副反応は24倍となっています。

3月25日、全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会が発足し、厚生労働省に対し、HPVワクチン接種の中止と現状を踏まえた追跡調査の早期実施・公表、被害救済制度による補償等を求める要請書・嘆願書を提出しました。

今回改めてHPVワクチンについて考えてみましたが、ワクチンの有効性や安全性の検証が十分に行われないまま定期接種化されたことには大きな疑問が残ります。厚生労働省自身がHPVワクチンが子宮頸がんの予防につながるかどうかは現時点ではわからないと言っていますが、一般の人は、このワクチンを打てば子宮頸がんにならなくて済むと思って接種しているわけで、認識に大きな差があります。副反応の頻度が高いことも併せて考えると、有効かどうかも分からない予防接種をどうしてこんなに急いで導入してしまったのかと思わずにはいられません。

3月28日の参議院厚生労働委員会の質疑の中で、はたともこ議員は「HPVワクチンの定期接種化は時期尚早であり、(ワクチンの接種よりも、定期的な検診による持続感染や病変の早期発見が重要である」と述べています。確かに、もともと予防接種をするにしても、検診とセットでなければ十分な効果は得られないと言う話だったのに、なぜか予防接種の話だけがどんどん先に進んでいった印象があります。財政的な余裕がないという割に、あっという間に定期予防接種化されたことは驚きというより、むしろ違和感を覚えます。重篤な副反応が出ているケースもあり、被害者の会が発足していることからも、改めてワクチンの安全性を早急に検証する必要があります。

(会報誌「満月」2013年5月号に掲載したものに一部加筆)

その後、厚生労働省は平成25年6月14日付で、当面HPVワクチンの定期接種を積極的に勧奨しない旨の勧告を出しています。

<参考資料>
2013.3.28厚生労働委員会質疑(http://www.youtube.com/watch?v=yUZEm5JRvjM&feature=share)、子宮頸がん予防ワクチンに関するQ&A(厚生労働省健康局結核感染症課作成(平成25年4月))、第17回厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会議事録(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001l2mv.html)全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会HP(http://shikyuukeigan.fem.jp/)
※URLは、いずれも2013年5月5日現在のもの

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