
出産育児一時金の見直しに伴う混乱
平成21年10月1日から出産育児一時金の支給額とその支払方法が変更されることになりました。支給額は4万円引き上げられて原則42万円になるとともに、直接医療機関へ一時金を支払う「直接支払制度」が実施されることになりました。
ところが、この「直接支払制度」への対応が間に合わない医療機関からの苦情や反発が相次ぎ、実施直前に、当面の間、その適用を猶予することが認められることになり、医療機関によって対応が異なるという混乱が生じています。
出産育児一時金等の見直し
これまでは、退院時に医療機関に出産費用を支払った後に、健康保険組合などに一時金の請求をしてお金をもらうというのが一般的でしたが、「直接支払制度」とは、医療機関が被保険者に代わって一時金の支給申請及び受取を直接保険者(一時金の支払機関・団体)と行うやり方で、妊産婦はまとまったお金を用意する必要がなくなりますので助かることになります。
<今回の改正点>
- 出産育児一時金を原則42万円に引き上げる
- 医療保険者から医療機関等に一時金を直接支払う「直接支払制度」の導入
医療機関等の負担増
しかしその一方で、今回の制度導入は医療機関等にとってかなりの負担となります。退院時に現金で入っていた出産入院費が、「直接支払制度」によって1か月半から2か月先まで入らないことになるからです。例えば1ヶ月に30件のお産がある施設の場合、1件の費用を40万円とすると、1ヶ月で1,200万円なので、2ヶ月で2,400万円もの資金の余裕がないといけないことになります。これは大変なことです。
他にも事務量増加の問題もあります。昨年からの産科医療補償制度の導入、妊婦健診料補助の拡充も妊産婦にはとてもありがたいことですが、産科施設から見ると、かなりの事務量増加につながっています。その上に今回の見直しで、さらに負担が増えることになります。
新しい制度の妊産婦の負担を減らそうという趣旨は分かりますが、産科施設の実態を十分把握して制度の導入を図ったとはいえず、やはり拙速であったと言わざるを得ないのではないでしょうか。
2009年10月7日
