助産師のはなし-新しい資格制度の提案

小林 哲朗

産婆から助産婦へ

戦後間もない頃までは、お産といえば、産婆さんが自宅で赤ちゃんを取り上げるのが一般的でした。しかし、戦後GHQの政策で、産婆の制度はなくなり、産む場所も自宅から医療施設へと移ることになりました。保健婦助産婦看護婦法(以下保助看法)の制定(1948)により、産婆の多くは助産婦となり、病院や診療所で勤務することになりました。また全国各地に助産婦養成所が作られて、新らしい助産婦が養成され、彼女達もまた、病院や診療所で勤務するようになりました。

これにより施設分娩の流れは決定的となり、1950年には約95パーセントの人が自宅出産していたものが、60年には50パーセント、65年には20パーセントを切り、70年には5パーセント以下になりました。わずか20年で、お産をする場所は、自宅と施設で完全に逆転することとなったのです。助産所も、主にかつての産婆が開設し、一時はかなりの人が出産していましたが、1970年頃を境に助産所で産む人の数は減少し、現在では分娩全体の1パーセント程度となっています。

つまり、分娩場所が自宅から医療施設に移ったという変化は、単なる場所の問題に留まらず、お産サポートの構図が、産婆-自宅から、医師-病院、診療所に変わったことも意味します。

我が国の分娩場所の推移(自宅と施設)

資料:厚生労働省

助産師になるには

助産師になるには、看護大学に行くか、または看護師免許取得後に、助産師養成所或いは看護短大等に行くことになります。これらを卒業すると、助産師の国家試験を受験することができ、合格すると助産師の資格(免許)が得られます。

助産師とは、その役割

保助看法では、「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じよく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子のことを指し、妊婦、産婦、じよく婦、胎児又は新生児に異常があると認めたときは、医師の診療を求めさせることを要し、自らこれらの者に対して処置をしてはならないとありますが、経過が正常であれば、単独で業務を行なうことができます。助産師は開業権も有しており、開業して助産所を開くこともできます。

しかし、現在の病院や診療所においては、医師中心に業務が行なわれており、たとえ正常分娩であっても、助産師が主体的に関わっているケースはそれ程多くないと思われます。

助産師教育のあり方

近年は助産師を大学で養成しようとする流れがあり、助産師養成所が各地で閉鎖されるという状況があります。しかし、養成所に行く場合は、通常看護師3年間+助産師1年間(6か月以上)かかるのに対し、大学の場合は、学部2年間という短期間で看護師、助産師、保健師3つの資格が得られるわけで、必然的に実習の時間は短く、臨床に出た当初は養成所出身者に比べて使えないという指摘が以前からあります。

そもそも、正常産のみという条件付きながらも、単独で業務が行なえ、尚且つ開業権まである助産師の教育が、この程度でいいのかという問題があります。今後、助産師に何を求めるのかということにもよりますが、専門性を持って業務を行なうことを期待するのであれば、養成のための教育や、その後の研修制度などについて検討する必要があるのではないでしょうか。(この問題は、国会でも取り上げられています。)

新しい資格制度の提案

お産はリスクを伴うものであり、安全が最優先されるべきものだとしても、それは安全であれば、その過程は何でもいいということは意味しません。消費者(妊婦とその家族)の希望は、可能な限り尊重されるべきであるということは、当然のことです。お産の9割方は、自然に産むことができるという話もあり、それを望む消費者も少なくありません。自然なお産に関しては、助産師に対する期待は大きいのですが、前述した通り、たとえ正常産であっても、助産師だけでお産を取り上げるということは、現在では一般的とはいえません。消費者自体、医師が診るのが当然という思い込みもありますし、経験が浅く、技術的に対応することが難しい助産師もいることでしょう。

そこで、消費者側からの提案です。他の資格にもあるように、職能に応じて、2つの資格を設けたら、どうでしょう。

第一種助産師(仮)

第二種助産師(仮)取得後、必要な要件を満たしたものが取得できる資格。例えば、次のことができるものとする。

  • 開業して、助産所を開くことができる
  • 病院、診療所内では、ガイドラインに従い、正常産であれば、他の一種または二種の助産師と共に、お産を取り上げることができる
  • 産科オープンシステム病院を助産所として利用することができる

第二種助産師(仮)

いわゆる、普通の助産師。医師または、一種助産師(仮)の助産師の指示の下に正常産を取り上げるものとする。

この上で、第一種助産師(仮)がガイドラインに従い、他の助産師と共に助産業務を行なっている時は、医師であっても正当な理由がない限り、それに代わって処置を行なわないものとする・・・という考えです。

おそらく助産師から見ると、とんでもない話でしょうね。何ができるかということは、別にして、上のように分かれていたら、消費者は分かり易くて、安心してサービスが選べるのではないかと思います。是非、検討していただきたい。

助産師の産科オープンシステム利用

いま、診療所の産科医師がオープンシステム病院を利用する仕組みの実現を目指した動きがありますが、オープンシステムが推進されるというのであれば、当然助産所の助産師も利用できるべきでしょう。助産所には、温かい雰囲気の中で、できるだけ自分の希望通りに、自然に産むことができるという利点がある反面、病院や診療所に比べると緊急時の対応が難しく、それだけ危険が高いという欠点があります。それが、病院で、助産所のお産ができるとしたら、その問題がかなり解消されるわけで、そうしたお産を望む消費者も少なくないと思われます。

これまで、そしてこれから

助産師は今後、お産にどういう風に関わっていこうと考えているのでしょうか。分娩場所の推移と、その間の業界団体等の動きを見ると、開業助産所の存続、発展に力を注ぐ考えはないように見えます。また病院でも、主体的にお産を取り上げることを目指しているようにも見えません。もちろん、個人や、グループでの行動はあるでしょうが、大きな動きになっているとはいえないでしょう。このまま、流れに身を任せていくということなのでしょうか。

自然なお産を望む消費者を応援する立場からすると、助産師に期待するところは大きいのですが、なかなか振り向いてもらえません。このまま片思いに終わってしまうのでしょうか・・・。

(2004年10月26日)

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