母乳育児を取り巻く環境

赤ちゃんにとって一番の栄養は母乳です。赤ちゃんを母乳で育てることはとても自然なことです。多くのお母さんたちが赤ちゃんを母乳で育てたいと思っています。 厚生労働省の乳幼児栄養調査(平成18年)によれば、妊婦の9割以上の人が、できれば母乳で育てたいと思っているそうです。しかし、実際に母乳のみで赤ちゃんを育てた人は、生後1か月の時点で4割余りにすぎません。これはかなり厳しい数字です。

当たり前のことですが、人工乳がなかった頃は、誰もが母乳を上げていました。中にはどうしても母乳が出なくて、他の人からもらうということもあったようですが、それでも、ほとんどの人が母乳だけで赤ちゃんを育てていました。しかし残念ながら、今では母乳だけで赤ちゃんを育てることは、それほど簡単ではなくなってきているようです。

産科施設における母乳育児支援の状況

産科施設は、お産を取り上げるところですが、産後しばらくの間入院することから、母乳育児支援において重要な役割を果たすことが期待されています。しかし実際には、お産のことで手一杯で、母乳育児のことまでは手が回らない産院が少なくありません。

母児別室

母乳育児をするためには、お母さんと赤ちゃんが一緒にいなければいけませんが、お母さんは入院室、赤ちゃんは新生児室というように、別々の部屋に入る母児別室の施設がかなりあります。授乳時間が決まっていて、そのたびにお母さんが赤ちゃんを受け取って授乳しますが、これでは母乳育児は進みません。

指導者の人材不足

かつて誰もが母乳を上げていたときには、見よう見まねで、また周りから色々なアドバイスを受けながら自分で母乳育児ができるようになったかもしれませんが、今は、母乳育児について何かしらの指導が求められる状況にあります。産科施設においては、通常は助産師か看護師が母乳育児の指導を行いますが、養成課程において母乳育児について学ぶ機会はあまりなく、あっても十分とはいえないこともあり、指導できる人材が不足しているというのが実状です。

リスク回避

個人差はありますが、母乳育児には、出産後すぐには母乳はあまり出ず、十分に分泌されるまでに少し時間がかかるという難点があります。母乳の分泌量が少ないと、赤ちゃんには黄疸や低血糖などへの注意がより必要になります。この点、人工乳の場合はそうした懸念が和らぎ、体重も順調に増加するので、産科施設としては、どうしても人工乳を余計に与えてしまう傾向にあります。リスクを負ってまで産科で新生児を管理したくは無いという気持ちもあるかもしれません。

人工乳メーカー

産院の多くに人工乳のメーカーが入って、調乳指導やサンプルの提供などを行っています。初めに使った人工乳をその後も使い続けることが期待されるので、人工乳のメーカーはできるだけ産院に入りたがり、産院側も人工乳メーカーを入れることで色々なメリットが期待され、両者の利害が一致しているという構図があります。しかしこれでは、母乳育児はより積極的には推進されません。WHOとユニセフは、母乳の代替品のサンプルを配ってはならないとの勧告を行っていますが、日本の多くの産院では守られていないのが実情です。

赤ちゃんにやさしい病院

WHOとユニセフは、母乳育児を中心とした適切な新生児ケアを推進するため、「母乳育児を成功させるための10か条」を長期にわたって尊守し、実践する産科施設を「赤ちゃんにやさしい病院」として認定することになりました。日本国内では、「日本母乳の会」が、その審査とユニセフへの認定申請を行っており、2009年8月現在61施設が認定されています。(日本母乳の会のHPより)

保健所、母乳育児支援団体

多くの自治体で、母乳育児や赤ちゃんの発育についての相談などを受ける新生児訪問や電話相談を行っています。母乳育児については、自前で対応できる十分な態勢を持つところが少ないため、専門機関への橋渡し役を果たすところが多いようです。

民間では、日本母乳の会やラ・レーチェ・リーグ日本、日本ラクテーション・コンサルタント協会などの団体が母乳育児支援の情報やサービスの提供を行っています。また地域では、母乳育児サークルを開催したり、メールやブログなどで情報の共有を行ったりしているところがあります。

家族

戦後の一時期、人工乳がより推奨された時期があります。このため、母乳で育てたいお母さんと人工乳に抵抗のないおじいちゃん、おばあちゃんとの間で摩擦が生じることがあります。お母さんは、不安ながらも、母乳育児について色々と調べて頑張ろうとしているのですが、「泣いているから足りないんじゃないの?」「体重が増えてないんじゃないの?」などと何かにつけ言われ、気が滅入ってしまうというような話を時々聞きます。

お母さんの思い入れが強すぎて冷静な判断ができないようでは困りますが、周りの人が情報や知識のないままに否定的なことを言うことは、お母さんにとって大きなストレスとなります。せっかく楽しいはずの母乳育児が辛いものになりかねません。母乳育児を成功させるには、周りの人の理解や協力が必要ですが、実際には、なかなかうまくいっていないことも多いようです。

このページの先頭へ
© 2004-2013 お産子育て向上委員会.